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(11)ガザミふやそう会
1987(昭和62)年3月、全漁連主催の第33回全国漁村青壮年婦人活動実績発表大会が東京で開催された。発表は、①漁業部門、②増養殖部門、③経営部門の3分科会に分かれて行われた。兵庫県から参加した岩見漁協友水会は増養殖部門において「抱卵ガザミの保護は我々の手で~ガザミふやそう会誕生~」と題して発表し、審査の結果、農林水産大臣賞を受賞した。受賞は、ガザミの抱卵期である6~8月の3ヵ月間、漁獲された抱卵ガザミを海へ戻す資源保護活動が組合の枠を超えた広域資源管理の組織化につながったことを評価されたものであった。
ガザミふやそう会設立までの経緯は、次のように紹介されている。岩見漁協友水会では、夏場に安値で取引される抱卵ガザミを保護し、産卵(ゾエア幼生のふ出)させて、冬場の高値時期に漁獲できないか検討を続けていた。まず、抱卵ガザミの生態を確認するために、漁協の活魚水槽で抱卵ガザミの飼育に着手した。そこで、抱卵ガザミの外卵の色から、ふ出時期を推定できるようになり、ガザミが6~8月の産卵シーズン中、1ヵ月おきに3回産卵することが明らかになった。次に、抱卵ガザミに3回の産卵(ふ出)をさせた後、漁獲対象に戻す方法について、県・県水試・系統団体の担当者らを交え、検討と実験を重ねた。その結果、①抱卵ガザミの甲羅にペイントマーカーで「とるな」マークを記入して放流、②とるなマークは3回産卵(ふ出)後の脱皮によって、脱落・消失して漁獲対象に戻る、ことを確認した。こうした抱卵ガザミ保護の手法をもとに、ガザミで利益を得る漁業者や鮮魚流通業者をはじめ、行政・系統関係者、一般消費者にも広く呼びかけて、「ガザミふやそう会」が設立された。
この会には摂播地区漁青連(22漁協青壮年部)が参加し、単協の枠を超えた組織化が図られた。ガザミふやそう会は、会員から年会費500円を徴収し、その資金で抱卵ガザミの買い上げを行った。買い上げたガザミは、漁協の役職員らの協力によって「とるな」マークをつけて、海に放流された(拓水367号)。
1988(昭和63)年11月発行の拓水385号の「サンテレビ「こちら海です」ロケだより」で、ガザミふやそう会が紹介された。会の発足は1986(昭和61)年12月、岩見漁協友水会の提案が始まりであった。発足からすでに2年が経過したが、岩見・高砂・伊保の青年部員らが、月2回の御津町新舞子浜での干潟調査を継続していた。ガザミや放流されたクルマエビ・ヒラメの成長を調査する草の根的な運動が漁獲高の増加につながってほしい、と結ばれている。
2016(平成28)年5月、摂津播磨地区漁協青壮年部連合会の通常総会が県水産会館で開催された。2016年は摂播漁青連設立40周年、ガザミふやそう会設立30周年と区切りの年となった。総会後の学習会では、県漁連担当者から「ガザミふやそう会について」の講演があり、設立当時の映像をみて活動を振り返った。参加者は会への理解を深め、今後の活動に対する意欲を強くした(拓水716号)。
2022(令和4年)7月発行の拓水789号に、「ガザミふやそう会」の会員募集記事が掲載された。同会は、1986(昭和61)年から抱卵ガザミを買い上げ、自然の力でガザミ資源を増やす活動を継続してきた。