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(26)カキ養殖

1997(平成9)年9月発行の拓水491号の「水試NOTE」にカキ養殖の歴史が掲載された。それによると、日本のカキ養殖は室町時代の終わり頃(1532~1555年)に、広島県の草津で始まったといわれている。1673年(江戸時代の始め頃)には同じ草津で、浅海に竹を立ててカキを付着させる「ひび立て養殖」が始まった。ひび立て養殖は、江戸時代から昭和初期まで続き、その後、杭打垂下法(簡易垂下法)が登場、1955(昭和30)年頃から、現在の竹を用いた筏式垂下法へと変遷した(カキの養殖方法は、これらの他にも石蒔き式、地蒔き式および宮城県などで行われている延縄式があり、地域の海域特性により異なる)。竹を用いた筏式による養殖は、風波に強く筏が安価に作成できることから、急速に普及した。兵庫県でも、相生湾でかなり古くからカキ養殖が行われており、西播地方を中心に、主に筏式の養殖漁場が拡大し現在に至っている。「水試NOTE」には「カキの生活史」の詳細も紹介されている。

2000(平成12)年1月発行の拓水519号の「普及員だより」に、西播のカキが紹介された。それによると、2000年当時の兵庫県のカキの生産量は全国第5位で、そのほとんどが西播地区で生産されていた。この地区のカキ養殖は江戸時代に始まり、本格的に広まったのは1972(昭和47)年頃で、2000年時点の経営体は53を数えた。

2004(平成16)年5月発行の拓水571号の「ウチの漁協!」に、JF室津が紹介された。室津港の歴史は古く、約2000年前に造られたという。JF室津のカキ養殖は1998(平成10)年から始まり、2004年時点では11経営体が携わっている。養殖漁業は、サラリーマンと同様に、ある程度収入が計算できるため、生活を安定させる漁業として着業希望者が増えており、これからの室津の漁業を背負って立つ期待を抱かせた。

カキ養殖漁場:JF室津
▲カキ養殖漁場:JF室津

2005(平成17)年7月、赤穂市文化会館において「第6回全国カキ・サミット兵庫大会」が開催された。全国・県内各地から生産者ならびに漁業関係者ら約600名が参加した。全国カキ・サミットは1995(平成7)年の宮城大会を皮切りに、2年に1度全国のカキ生産県で開催されているもので、兵庫県では初の開催となった。大会は「小売業としての水産物の仕入れと販売」と題した基調講演の後、「美味しいカキを安心して買っていただくために」をテーマに生産者・流通業者・研究者など7名によるパネルディスカッションが行なわれた。最後に大会宣言として、①漁場環境を保全する、②徹底した衛生管理に取り組む、③国内産カキの消費拡大と情報発信を行う、④相互交流を図り活力ある生産地づくりを進める、の4項目を採択して閉会した(拓水585号)。

パネルディスカッション:第6回全国カキサミット兵庫大会
▲パネルディスカッション:第6回全国カキサミット兵庫大会

2005年(平成17)年11月発行の拓水589号の「ウチの漁協!」に、JF相生が取り上げられた。JF相生でカキ養殖が本格的に始まったのは、1978(昭和53)年頃で、それまでは漁船漁業が主体であったが、新しい漁業を模索し、試行錯誤を繰り返した結果、カキ養殖にたどり着いたという。カキ養殖が始まった頃の生産者数は、わずか数名であったが、2005年時点ではほとんどの組合員がカキ養殖に携わっていた。また、JF相生では2000年頃から、県水試の指導を受けてカキの採苗にもチャレンジしている、と述べられている。

2006年(平成18)年12月、カキを食べた消費者がノロウイルスに感染した、との報道によって風評被害が発生し、西播地域の養殖カキの出荷量が激減した。そこで、「西播磨のカキは安全!」と宣言するイベントが各地で開催された。相生市では、同年12月に市内の量販店の店頭で、組合長、西播磨県民局長、たつの市長、相生市長らが安全を宣言し、焼きがきの試食会やカキの無料配布などを行った。また、神戸市中央卸売市場本場においても同月、カキの消費拡大キャンペーンが開催され、神戸市産業局長ほか市場関係者、JF兵庫漁連会長、JF室津組合長をはじめ多数の生産者が参加し、消費者代表、県議会議員、小売業者等の関係者に対して、「兵庫県産カキ」の安全性をアピールした(拓水603号)。

カキ抑制棚:JF相生
▲カキ抑制棚:JF相生

日本オイスター協会が2012年に開催した「第1回かき日本一決定戦」で、JF室津の生産者が第3位、JF赤穂市の生産者が第4位に入賞し、兵庫県産カキの品質の高さが証明された。このコンテストにエントリーするには、ホテルや有名オイスターバーなど3社以上の推薦を受け、衛生面等の基準をクリアする必要があった。今回は多くのエントリーの中から、最終選考に残ったのは11社・団体であった。最終選考会は、産地・生産者名を伏せ、同協会認定の審査員55名が殻付き生カキを試食して、味・食感・形など8項目について採点し、順位を決定した(拓水667号)。

2021(令和3)年8月、「第12回全国カキサミット2021兵庫大会」がオンラインで開催された。当初は前年(2020年)開催予定であったが、コロナ禍で1年順延された。大会は「安心・安全な生産体制、社会の変化に対応した販売体制の構築」をテーマに、全国のカキ生産者、関係者など多数が参加した。3つの講演のあと大会宣言が採択されて閉幕した(拓水779号)。

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