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(24)-2 ノリ養殖(色落ち)
1996(平成8)年11月発行の拓水481号に、県洲本農林の普及員が「ノリの色彩について」を寄稿した。これによると、ノリの色彩は、のりの品質を決める重要な要因であるという。色彩は、ノリ葉体に含まれる複数の光合成色素によって決まり、特に緑色のクロロフィルa、赤色のフィコエリスリン、青色のフィコシアニンの3種類が影響する。これらの色素のいずれかが低下すると、色彩が変化する。また、これらの色素は食味に関わるたんぱく質とも結合しており、色彩は加工されたのりの食味にも大きく影響する。淡路島では、1996(平成8)年2月に、西浦地区を中心に色落ちが発生し、大量の無札のり(共販で入札されなかったのり)が発生したが、ノリの色落ちは、これらの色素含量が著しく低下することによって引き起こされた、と指摘している。
兵庫県におけるノリの色落ち現象は、1996(平成8)年以降、県下各地で散見されるようになり、2001(平成13)年以降は頻発するようになった(制作委員会注)。
2004(平成16)年3月13、14日、のり養殖基本問題検討委員会の委員9名が、漁場改善(干潟造成)に取り組む愛知県三河湾を視察し、現地にて研修会を開催した。この研修会は同委員会において、ノリの色落ち対策が議論されている中、先進的に干潟造成に取り組む三河湾での現地研修を行うことで、兵庫県での対策に資することを目的に実施された。三河湾では、1955(昭和30)年~1970(昭和45)年にかけて透明度が低下し、1975(昭和50)年頃から赤潮の発生が顕著になった。連動して貧酸素水塊が発生し、その後この状況が長期化・広域化した。赤潮と貧酸素水塊が頻発した時期と、三河湾の埋立(約1,200ha)とが同時期で、干潟の喪失が漁場環境を悪化させたと推察された。そこで、愛知県漁連では1991(平成3)年に漁場環境改善部を設置して調査・研究を開始、1996(平成8)年に提言を取りまとめた。同漁連は提言に基づいて、国・県に支援・協力を求め、1998(平成10)年に、国・県による造成事業が始まった。造成には、中山水道の航路整備に伴う浚渫土砂を用いて、2004(平成16)年までに600haの干潟造成をめざした。一方、兵庫県では、昭和40年代以降、埋立が急速に進み、2004(平成16)年には1955(昭和30)年と比べ、面積が6,000ha(関空6個分)増加した。これらの多くは浅海域の埋立であり、委員は干潟の喪失による損害は計り知れない、と結んでいる(拓水570号)。
2004(平成16)年4月、(社)播磨漁友会と(社)淡路水交会から、県と系統3団体(県漁連・信漁連・共済組合)に以下のような要望書が提出された。すなわち色落ちによるノリ養殖の大幅減産と漁船漁業の不振を踏まえ、①生活資金等緊急融資措置、②近代化資金の返済期間の延長、③系統購買決済ルールの緩和、④ぎょさい共済金の早期支払い、を求めたのである。系統3団体は理事会を開催し、ノリ養殖漁業については県に近代化資金の延伸措置を求めることを決定し、漁船漁業を含めた全県的な対策は、県と関係団体が事務レベルで協議したうえで、あらためて3団体の理事会に諮ることを決めた(拓水571号)。
2010(平成22)年度のり共販は、2011(平成23)年5月10日に終了した。2010年度漁期は、共販金額が30年ぶりに100億円を割り込む厳しい生産となった。育苗期に高水温が続き張込みを遅らせ、その後は急激に冷え込み、低水温状態が長期化した。さらに、年明けからは栄養塩不足による色落ちが発生した。ノリの色落ちによる品質低下によって、共販の平均単価は伸び悩み、下物相場が強い状況が続いた。2010年度の色落ちがきっかけとなり、例えば明石地区JFでは、それまでの海底耕耘に加え、すでに淡路東浦地区で実施されていた「かいぼり」が行われた(かいぼりについてはトピック「かいぼり」で詳述する)。また、JF兵庫漁連では下水道処理水の有効利用について、具体的な取り組みが開始された(拓水656号)。