検索
メニュー

トピックス検索(漁業のあゆみ) topics

(17)その他の養殖等(ニジマス海水馴致・エビ類)

1964(昭和39)年11月、瀬戸内海栽培漁業センターが、ニジマス(淡水産)を海水に馴致じゅんち(海水生活に慣らす)させ、低周波音を利用した条件反射と投餌を行うことで、囲網のない養殖漁場を造って飼育試験を行った。このニジマスが1965(昭和40)年5月には、体長35㎝程度に育った。瀬戸内海栽培漁業センターでは、ニジマスの放流尾数を増やすため、各地に馴致可能な施設の使用を求めた。兵庫県では、岩屋共栄漁協がコンクリート水槽を提供し、海水馴致が行われた。ニジマスは淡水で飼育するよりも、海水で飼育した方が成長が早く、身のしまりが良く美味と言われていた。明石海峡周辺は、海水の水温・比重が良好で、餌となるイワシ・イカナゴも豊富であり、ニジマスの棲息には好適であるという。また、海水馴致したニジマスを明石海峡に放流すれば、イワシ・イカナゴなどの低級魚の優占種から、高級魚ニジマスに優占種の形成を変え得るというところまで、栽培漁業が発展してきたと指摘している(拓水111号)。

県は(社)瀬戸内海栽培漁業協会と協力して、1966(昭和41)年2月上旬、福良湾及び岩屋沖に、それぞれ2,000尾のニジマスの放流を計画した。ニジマスは前述したように淡水魚であるが、約2週間かけて徐々に海水に慣らすと、海で棲息できるようになる。この時に放流されたニジマスも海水馴致したものであった。1965(昭和40)年に香川県が試験放流したところ、淡水養殖に劣らないニジマスが漁獲され、秋には1㎏以上に成長したものも漁獲された。兵庫県は、春にはイカナゴ・イワシなどの餌に恵まれ、明石・鳴門海峡の深場では水温が低い所もあるので、ニジマスは夏を越すことも考えられた。放流結果が良ければ、ニジマスを大量に放流し、瀬戸内海に新しい魚種を誕生させることが可能となる、と指摘されている。また、採捕した漁業者は、組合を通じて県当局に報告することが求められた(拓水113号)。

ニジマススケッチ
▲ニジマススケッチ

1966(昭和41)年6月発行の拓水117号に、ニジマスの海水放流の結果が報告された。県と(社)瀬戸内海栽培漁業協会が共同で、前述のとおり1966年(昭和41年)2月下旬に、海水馴致を終えたニジマスを岩屋沖と福良湾にそれぞれ2,000尾放流した。1966(昭和41)年5月中旬までに、約40尾が採捕された。これらのうち岩屋沖放流分について調べると、放流時の平均体長12㎝、体重30gであったものが、わずか2ヵ月ほどの間に、体長は平均18㎝、体重150gに成長した。秋から冬にニジマスが漁獲されれば、瀬戸内海に新しい魚種が誕生することになる、という。

1965(昭和40)年10月、沿岸漁業構造改善事業によって、赤穂市の福浦漁協に、クルマエビを主体とするエビ養殖場が完成した。面積600㎡のプールで、簡易冷蔵庫が併設された。海水は、10馬力ポンプを使って、地先の海底からパイプを通してくみ上げられた。また、プールには海水の循環と曝気のため、空気を送る設備を備えた。このプールには、地元で漁獲されるエビを一時に600㎏収容できた。本格的なエビ養殖(蓄養を含む)の開始時期として、1966(昭和41)年4月を予定した。完成直後は、エビ養殖最大の難関とされる越冬試験と、ガザミ蓄養試験を行った(拓水112号)。

関連ページ

top