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(2)大和堆イカ釣漁業
1924(大正13)年、水産講習所(東京海洋大学の前身)の調査船「天鷗丸(てんおうまる)」が日本海の海洋調査中に、水深472mの浅瀬を発見、この付近を調査し、砂質にゴカイ混じりの浅い底質の部分があることを確認した。これをもとに1926(大正15)年に、海軍の測量船「大和」が、詳しく測量調査を行い、最も浅い部分は水深307mの堆(※1)であることを確認したことから、「大和堆」と名付けられた。
大和堆の漁場開発は、1960(昭和35)年頃から開始された。日本海各府県水試が共同で対馬暖流の調査を実施し、大和堆のマス漁場などが発見された。
スルメイカ漁場の開発は、1961(昭和36)年に、日本海区水産研究所の指導によって新潟県が実施し、大和堆周辺で好成績を上げた。1962(昭和37)年からは、日本海各府県水試の試験船が大和堆に出漁して、試験操業を行い、各府県とも好結果を得た。
本県では、1963(昭和38)年7月中旬~8月下旬に、県水試の調査船「兵庫丸」が大和堆の大型スルメイカ(27、28㎝)の漁場調査を実施した。寒流流路の変化のためか、前年より漁獲量は減ったが、魚体は前年と変わらなかった。その後も、毎年「兵庫丸」による調査が実施され、事業的にも極めて有望視されてきた。
県水試では「兵庫丸」等の調査の結果、大和堆のスルメイカ漁場は、例年定常的に出現する「大和堆冷水域」と対馬暖流の第3分波流との寒暖両流が接触する、いわゆる「極前線海域」に形成されるが、潮境の幅は20海里内外に及ぶことがわかった。この漁場帯の中では、常に好漁場となる所と突発的に好漁があるが長続きしない所があることから、安定的な漁獲を得るためには、集団操業方式で漁船同士が相互に漁況を交換することが望まれる、と報告されている。
さらに、県水試では全国的に普及してきた自動イカ釣機の研究を、1965(昭和40)年から開始しており、水試の研究員が「第一兵庫丸」に乗船して実証試験を行っている。自動イカ釣機は、大和堆のようにイカ群の層が厚い漁場では、大きな力を発揮するが、沿岸イカ釣のようにイカ群の層が薄い漁場では、効果が期待できないとしている。
大和堆でのイカ釣漁業が注目される中で、1966(昭和41)年7月20日から、津居山港漁協所属のイカ釣漁船2隻が大和堆に出漁した。1隻は8月中旬に操業を打ち切ったが、もう1隻は9月15日まで延べ11航海を行って水揚高400万円以上と極めて良好な成績を収めた。なお、この漁船は自動イカ釣機を備えており、他県船の半分の人数での漁果であった。
前年の津居山港漁協所属船の好漁を受けて、1967(昭和42)年の大和堆イカ釣には但馬各地から36隻が出漁し、水揚高は1隻平均400万円、総額1億5千万円となった。但馬全体の水揚高の6%程度であったが、新しい漁場での水揚の意義は大きかった。同年の漁場は、北大和堆に形成され、前年の南大和堆よりも約60海里遠かったことから、燃料を多く積みこむことができ、氷造能力が高い大型船に有利であったと考えられる。
1968(昭和43)年には、大和堆でのイカ釣漁業の好調を背景に、底曳網漁業者の周年操業(兼業船)と沿岸一本釣漁業者の協業的操業(専業船)による広範囲な沖合イカ釣漁業の実施が、但馬における新たな水産振興につながった。さらに将来的に出漁船が増えることが確実な中で、漁業者間の連絡を密にして、他府県入港、県外出漁の課題を円滑に処理していくために、兵庫県沖合イカ釣漁業協議会が発足している。同年の出漁漁船数は、兼業船72隻・専業船11隻の計83隻を予定していた。
1969(昭和44)年の大和堆への出漁は、兼業船100隻と専業船40隻が予定していたことから、船員不足が深刻となり、全体で70名が不足となった。緊急対策として、青森まで出かけて7名を確保した。しかし人手不足の解消には他力本願ではなく、地元の中学校・水産高校卒業生に、但馬の漁業の現状と明るい将来性を説明して、理解を得るよう努める必要があるとの提案が県からあった。これを受けて、1970(昭和45)年7月、但馬地区漁業後継者育成対策協議会が設立され、県・市町担当者、関係漁協組合長、但馬漁連会長らが出席し、後継者対策についての協議が始まった。
(※1)頂部が比較的平らな海底の高まり。礁より深く、船の航行に支障がなく良好な漁場になる。
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