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(33)保護水面・稚魚育成漁場・育成水面
1969(昭和44)年1月、兵庫県立水産会館で開催された第17回漁村青壮年活動実績発表兵庫県大会で、県水試の主任研究員が「保護水面」について特別発表した。これによると、1966(昭和41)年度、三原郡西淡町湊沖に保護水面46万㎡が設定された。設定の要件として、藻場造成を目的に、水深10m以浅の広い海域を有し、今後数ヵ年は埋立・公害発生の恐れがない場所が求められた。同水面では全ての漁業を禁止するため、海面には浮標灯を設置して明示し、周辺海底には有刺ブロックを設置、藻場造成のために水深3~6mに投石を行った。保護水面設定後の効果の検証として、建網による漁獲調査と潜水による漁場の観察が実施された。設定後2~3ヵ月で、チヌ・メバル・イサキなどの集魚がみられ、1ヵ年でアイナメ稚魚の大発生が起こった(拓水149号)。
兵庫県は水産資源保護法に基づく保護水面を、1966(昭和41)年度には前述のとおり西淡町湊沖、1971(昭和46)年度には南淡町灘沖に設置した。設置後は計画に沿って、毎年投石を続けてきた。1976(昭和51)年度は、10月26日の湊沖、同月28日の灘沖に、それぞれ500㎥を投石した。保護水面は、全面禁漁区となり、一切の水産動植物の採捕が禁止された。県水試は、魚類の生息状況等を定期的に調査した。調査担当者は、両海面とも投石魚礁の効果が著しく、季節により集まり育つ魚・海藻類は異なるが、チヌ・メジナ・メバル・アイナメ等磯魚の格好の成育場所となっている、と報告している(拓水242号)。
兵庫県は、1971(昭和46)年~1973(昭和48)年の3ヵ年にわたって、五色町沖に稚魚育成漁場を造成した。稚魚育成漁場とは、中高級魚の生産増大を図るため、稚魚の繁殖と生育保護を目的に設置するもので、兵庫県が全国に先駆けて県の単独事業として実施した。育成漁場には、県がクルマエビやマダイの稚魚の放流を続けており、その効果に期待が寄せられた。1974(昭和49)年度には、新たに北淡町育波地先に造成することが決定した。この育成漁場は面積42万㎡、水深7~14mで、造成期間は1974(昭和49)年~1975(昭和50)年の2ヵ年であった。初年度は県単事業で1/3を造成、第2年度は新たに施行された沿岸漁場整備開発法によって、国の補助事業として実施が予定された(拓水218号)。
1974(昭和49)年5月、沿岸漁場整備開発法が施行された。この法律は、優れた沿岸漁場として形成されるべき相当規模の水面において、魚礁の設置・消波施設の設置・効用の低下した漁場を回復するための堆積物の除去事業等と共に、特定水産動物育成事業の対象魚種を集中的に放流して保護する「育成水面」制度が柱となった。積極的に資源を増やし、漁獲量を増加させるためには、「育成水面」を設け、保護育成漁場を大規模に造成する必要があった。兵庫県ではそのパイロット事業として、湊漁協の協力を得て、西淡町湊沖にクルマエビを対象とした育成水面を設定した(拓水218号)。
1974(昭和49)年度から造成が始まった北淡町育波地先の稚魚育成漁場が、1976(昭和51)年3月に完成した。県では今後7年間に、沿岸漁場整備開発法に基づく稚魚育成漁場を、10ヵ所造成する計画を立て、1976(昭和51)年度は明石地先を予定した。稚魚育成漁場では、兵庫県漁業調整規則によって、水産動物採捕禁止の措置がとられた(拓水237号)。
1976(昭和51)年10月から造成が始まった明石市江井ヶ島地先の稚魚育成漁場が、1977(昭和52)年3月に完成した。面積は9万㎡に及んだ(拓水248号)。
2023(令和5)年現在、兵庫県漁業調整規則で保護水面3ヵ所、稚魚育成漁場3ヵ所が採捕禁止区域に設定されている。