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(45)かいぼり

2008(平成20)年10月~11月、JF森・JF仮屋が農業関係者と協議を重ね淡路市内の浦川上流の2ヵ所のため池で「かいぼり(池干し)」を行った。淡路島には農業用のため池が2万ヵ所以上あり、島の北半分を占める淡路市内には1万ヵ所が点在している。以前は、ため池の保守点検と魚とりのレクリエーションを兼ねて、農家が総出でかいぼりが行われていたが、近年は人手不足で、実施機会が減っていた。しかしながら、両JFの漁業者は、ため池の水には、海のプランクトンの増殖を促したり、良質のノリづくりに不可欠な栄養分が豊富に含まれていることに着目しており、かいぼりの共同実施を早くから農業者に提案していた。それが、実現に至ったのである。同年11月にかいぼりを実施した池の脇池(貯水量5,000t)では、JF森・JF仮屋の漁業関係者約30名と農業関係者約20名が集まり、作業の打合せの後、放水が行われた。最後に残った「泥さらえ」では、若手参加者が泥だらけになりながら、4~5㎏あるコイを捕獲した。このように、農業者と漁業者が協力してかいぼりを行うことは、双方にとってメリットが大きく、今後も運動を続けていくことが確認された(拓水626号)。

漁業者と農業者がかいぼり:浦川上流のため池
▲漁業者と農業者がかいぼり:浦川上流のため池

JF仮屋とJF森は、2011年(平成23)年11月、地元農業関係者、行政とともに「浦川地域ため池・里海保全協議会」を発足させた。同協議会は、2011年12月に淡路市の桜が淵池(貯水量8,400t)で、同市河内地区・小田地区の住民らとかいぼりを行った。参加者約50名は、重機を使って堆積物を少しずつ水に混ぜ、これを水路から浦川へ放水した。さらに、ため池の保全のため、池の周囲の竹林の伐採作業も行った(拓水651号)。

2011(平成23)年2月発行の拓水652号に、明石市で「豊かな海の再生プロジェクト」の一環として実施されたかいぼりの様子が紹介された。今回のかいぼりは、明石市漁業組合連合会、県、明石市ため池協議会連絡会、いなみ野ため池ミュージアム運営協議会が主体となり「ため池クリーンアップキャンペーン」とあわせて実施された。今回は初めての試みとして、同連合会の関係者らが2010(平成22)年11月以降、市内数ヵ所のため池をかいぼりし放水した水を、池からつながる赤根川の水門を閉めて一時的に貯めておく方法をとった。これを翌年1月に放水した。放水直後、水門付近の水は勢いよく流れ出し、約1時間後に河口に到達した。今後、この水門から数回に分けて放水が行われる予定であった。別のため池でもかいぼりが計画された。

2011(平成23)年2月、JF全漁連は「環境・生態系保全活動支援事業」に関する活動事例発表会を東京都内で開催した。同支援事業は、全国各地で深刻化している、藻場の磯焼け・サンゴの白化現象などへの対策を支援するための事業であった。この発表会に、兵庫県からは「森地区豊かな海づくり活動組織」の副代表(JF森)が、「豊かな海の再生に向けて」と題して発表を行った。森地区沿岸域における数十年間にわたる地形の変化や、海底耕耘、農業者と連携して取り組む「かいぼり」の実践状況が報告された(拓水653号)。

2011(平成23)年9月発行の拓水659号に、同年8月に明石市で開催された「里」と「海」の協働推進フォーラムの様子が紹介された。このフォーラムは、農業者と漁業者の連携・協働によるため池のかいぼりを活用し、「豊かな海の再生」に取り組む活動について公開協議するもので、市民ら約350名が参加した。パネルディスカッションでは、明石市漁業組合連合会会長がかいぼりについて、「これまでの活動できっかけはできた。後はどのように継続・展開するかが課題だ」と述べた。

2011(平成23)年10月、JF森とJF仮屋の漁業関係者約60名が、淡路市河内地区の路谷池でかいぼりを行った。この池は、約200年前(1800年頃)に造られた貯水量110,000tの大型のため池で、人手不足のため、7~8年前からかいぼりが行われていなかった。かいぼりは、2010(平成22)年の明石地区に続き、淡路西浦地区でも今後実施される予定となった(拓水661号)。

2012(平成24)年4月発行の拓水666号に、同年3月に淡路市内で開催された「平成23年度ため池・里海交流保全に関する意見交換会」の模様が紹介された。兵庫県内には、ため池が約43,000ヵ所存在(全国1位)するが、その半数が淡路島にあった。池は田主たずと呼ばれる組織によって管理されていた。しかし、近年では高齢化の影響や農家の廃業等で、管理自体が放棄される池が増え、台風・大雨の際に池が決壊するなどの被害が懸念された。こうした状況をふまえ、ため池と里海のそれぞれが抱える課題を解決する手段としてのかいぼりについて、漁業者・農業者らが意見交換を行うことになった。農業者からは「かいぼりをしても漁業者に怒られなくなってうれしい」と発言があり、これに対して漁業者からは「ずぼ採苗が主流であったノリ養殖の時代には、泥が、敷設した網に着くと採苗が出来なかったからである」と回答があった。さらに漁業者から「ノリ養殖の技術が進歩し、採苗時にたとえかいぼりが行われたとしても何ら問題がなくなった。昔のことは忘れて、互いに前を向いて進もう」との発言があった。県の担当者は、ため池の管理については、農業者と漁業者だけではなく、地域住民の理解が必要であるとし、地域で今後フォーラムなどを開催する、と述べた。

2012(平成24)年9月、兵庫県水産会館において「平成24年度環境・生態系保全活動支援事業」の活動事例報告会が開催され、JF・系統・行政関係者ら約40名が参加した。前年度の活動の中から「耕耘による貝類生息環境の改善」と「ため池のかいぼりによる栄養補給の実践状況」の2例が報告された。かいぼりについては、淡路市の担当者から、2008(平成20)年から取り組んできた経緯と活動内容、今後の計画等について報告があった。続いて、活動の当事者であるJF森の組合長は「ノリの色落ちが発生する冬場は、農業者がため池に水を貯める時期と重なる。したがって、かいぼりを実施する時期の調整が難しい」と指摘した(拓水672号)。

2012(平成24)年10月、JF森とJF仮屋が地元の農業者と協働し、淡路市内の一谷池の16年ぶりとなるかいぼりを行った。JF森・JF仮屋、地元農業者ら約80人が参加した。池には多数の魚類の他、タニシやシジミなどの貝類も生息しており、豊かな生態系が形成されていた。池の底にたまった泥をポンプの水で洗い流した後、膝上まで泥に入りながら、残りの泥を手作業で流した(拓水673号)。

2012(平成24)年12月発行の拓水674号に、同年12月に淡路市で開催された「淡路ため池・里海交流フォーラム2012」の模様が紹介された。このフォーラムは、山と海をつなぐ取組としてかいぼりによる豊かな海の再生や、生態系の保全、防災・減災について考える催しで、市民ら約350名が参加した。パネルディスカッションでは、「淡路では管理されずに放棄されたため池が増えている。ため池の保全には農業用水を確保するための水源としての利用以外の存続理由が必要である」との指摘があり、「農と漁のほか、消費者である一般市民もかいぼりに参加する仕組みづくりが必要である」との提案もあった。

2012(平成24)年11月、「いなみ野ため池ミュージアム」が、活動の一環として、加古川市内の蓮池でかいぼりを行った。同ミュージアムは、東播磨地区のため池や水路網を核として、地域住民等の主体的参画と協働によって、地域全体を「まるごと博物館」として活用するという、魅力いっぱいの地域づくりをめざしている。当日は地元の町内会、水利組合、環境保全協議会からなる主催者と、地元小学生300名や大学生、行政関係者のほか、高砂市漁業組合連合会が初めて参加した(拓水674号)。

漁業者と学生らがかいぼり:明石市連
▲漁業者と学生らがかいぼり:明石市連

2012(平成24)年11月、淡路市の河内ダムで「浦川地域ため池・里海かいぼり祭り」が開催された。ため池関係者と漁業者のほか地域住民も参加して、イベントを楽しんだ。当日は雨が降る中、漁業者らによる「かいぼり」の実演が行われ、参加者は堆積した泥を水路に流す作業を見学した。また、パネル展示や紙芝居などを用いて、農家が高齢化等で池の管理ができなくなる一方、海の栄養が不足している状況などについて、地元住民に説明が行われた(拓水674号)。

2013年(平成25)年2月発行の拓水676号に、JF育波浦とJF室津浦が地元の農業関係者とともに実施したかいぼりが紹介された。同年1月、淡路市育波川流域の下川池において、両JFの漁業者と地元農業関係者ら約70名が参加してかいぼりが行われた。漁業者・農業者双方から、かいぼりを今後も続けていきたい、という声があがった。

JF森・JF仮屋などからなる「淡路東浦ため池・里海交流保全協議会」は、2014(平成26)年10月の2日間、淡路市内の大田池でかいぼりを行い、漁業者や地元農業者ら約60名が参加した。初日は事前に水を抜いた池から魚を取り上げ、「底樋(そこひ)」の周囲の土砂を流した。2日目はポンプを使って放水する中、漁業者が鍬などで土砂を流す作業を行った。この池のかいぼりは10年以上行われておらず、底には最大約1.5mの土砂が堆積していた。また、大学生がこの取組を卒業論文のテーマとして取り上げ、作業に参加するとともに、他の参加者から聞き取り調査を行った(拓水697号)。

2014(平成26)年12月発行の拓水698号に、同年11月に初めてJFとしてかいぼりを実施した、JF津名の取組が紹介された。JF津名は同年11月の2日間に淡路市内の黒田池(貯水量10万t)でかいぼりを行った。黒田池のかいぼりはおよそ10年ぶりの実施となった。参加者はJF津名の漁業関係者と地元農業関係者ら約60名であった。JF関係者は「今後も継続して実施したい」と述べた。

2015(平成27)年1月、明石市漁業組合連合会が明石市内の二見新池・(2,600t)でかいぼりを実施した。参加者は漁業関係者、水利組合関係者の他、明石高専の学生、県・市の職員ら約60名であった。放流された水は瀬戸川を経由して、約2㎞先のノリ漁場へと向かった(拓水700号)。

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