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(39)1県1信用事業統合体(全国漁協オンラインシステム)
1989(平成1)年7月、県信漁連の貯金業務が全国オンラインシステムに移行した。同年8月には全国32信漁連全店舗の為替業務も全国オンラインシステムに移行した。1990(平成2)年度以降は、全国の信用事業実施漁協が、順次「全国漁協オンラインシステム」に参加することになった。兵庫県では1990年度に12漁協が参加を予定した。オンラインネットワークが真にその効果を発揮するためには、全ての信用事業実施漁協が参加する必要があった(拓水395号)。
1989(平成1)年9月発行の拓水395号に、全漁連信用事業推進部が『季刊くみあい漁協No.21増刊号』に寄稿した「漁協系統信用事業のオンライン化今後の課題は……」の抜粋が掲載された。それによると、金融自由化が進展する中で、新商品に対応していくためにオンライン化は必須で、手作業での処理は不可能である、と述べられている。また、オンラインシステムでは共同利用のメリットを生かして、後方事務の省力化を図ることができる。市中銀行等では、オンライン処理による事務の省力化で、余った時間を渉外活動に当て業績を伸ばしてきた。
漁協系統信用事業の課題としては、全国漁協オンラインシステムが稼働したものの、4~5年先でも約半数の漁協は加入しない見込みであった。金融機関のオンライン化はすでに当り前のことになっており、漁協系統のみが取り残されていた。特に1990(平成2)年の春から夏にかけ、都銀、地銀を中心に各金融機関間のCDオンライン提携が予定されていたが、漁協系統は申し込むことさえ困難であった。
オンラインシステムへの参加の一番の阻害要因は、費用の問題であった。貯金量1億円の規模の小さな漁協で、年間100万円を超える運営費用を要した場合、貯金に対して1.0%を超えるコストがかかる。解決策としては、漁協合併あるいは信用事業統合を実施してでも、オンライン化を進めることである。そうでなければ金融自由化の波のなかで、漁協系統は淘汰されてしまうことになる。
1995(平成7)年11月、県信漁連がATMによる貯金の取り扱いを開始した。兵庫県下での漁協系統のATMの設置は、香住町漁協、坊勢漁協に続いて3台目となった。同年10月末現在、全国のオンライン化店舗は1,240で、そのうち897店舗と北海道の漁協・信漁連(ATM等は169台)、及び農林中央金庫において、漁協キャッシュカードが相互に利用できるようになった(拓水470号)。
1997(平成9)年1月発行の拓水483号の年頭挨拶で県信漁連会長は、漁協の幹部職員を専門委員に委嘱して検討を重ねた結果、「漁協信用部と信漁連の統合1県1信」を構想した、と発表した。
1997(平成9)年5月に開催された県漁連・県信漁連・共済組合3団体の合同通常総会において、県信漁連は「1県1信用事業統合体」構想は具体的に3組合をモデル組合として選定し、各組合との間で「覚書」を締結するにいたった、と発表した。同年秋の2漁協と1加工協の「支店化」に向け、今後諸手続きが実施される(拓水488号)。
1997(平成9)年10月、1県1信用事業統合体のモデル1号店として、明石浦支店がオープンした。同月中にATMも稼働した。同支店では、明石浦漁協から8名の出向職員を受け入れた(拓水493号)。
1997(平成9)年11月、1県1信用事業統合体のモデル2号店・3号店として、津居山支店、香住加工支店がオープンした。津居山支店はオープンと合わせて、香住加工支店では同月中にそれぞれATMが稼働した。支店への出向職員は、津居山支店が5名、香住加工支店が8名となった。
今後の統合予定として、但馬地区では1998(平成10)年4月のオープンに向けて、香住町・浜坂町・柴山港の3組合が準備を進め、摂播地区では室津漁協が検討を開始し、淡路地区では信漁連の直営店の建設が進んでいた(拓水495号)。
1998(平成10)年4月、1県1信用事業統合体に柴山港・香住・浜坂町の3支店が加わった。支店への出向職員は、柴山港支店が4名、香住支店が8名、浜坂町支店が9名であった。同時に県信漁連但馬支所の閉所式が行われ、県信漁連の本所は「本店」と名称を変更した(拓水499号)。
1998(平成10)年6月、県信漁連直営の淡路島支店が津名町生穂にオープンした。同時に、淡路地区の統合1号店となる、塩田営業店、生穂取次店がオープンした(拓水501号)。
1998(平成10)年8月、1県1信用事業統合体として志筑浦取次店と佐野取次店が、同年9月には富島営業店と浅野浦営業店、育波浦営業店がオープンした。さらに同年10月には洲本営業店と江井ヶ島営業店のオープンが予定された。神戸市、林崎、家島、坊勢の各漁協でも検討が進められていた(拓水504号)。
2002(平成14)年7月、JFマリンバンクがインターネットバンキングの取扱いを開始した。携帯電話やパソコンから、残高照会・入出金明細照会・振込ができるようになった(拓水549号)。
2003(平成15)年1月、改正再編強化法が施行された。この法律は、漁協系統信用事業のセーフティネットの構築と事業・組織の効率化及び健全化を図るため、2002(平成14)年6月の通常国会で成立したものである。2001(平成13)年6月のJAバンクシステムの構築のために改正された再編強化法について、漁協系統信用事業における再編(合併及び事業譲渡)強化にも活用できるよう整備された。農林中金による特例指導業務、基本方針の制定及び指定支援法人等が規定された。
農林中金は、改正再編強化法の施行に合わせて、「JFマリンバンク基本方針」を定め、県全体で経営責任を果たす「1県1信用事業責任体制」を構築することとし、運営体制として、①1県1漁協、②統合信漁連、③再預け転貸方式等による信漁連を中心とした複数漁協体制、のいずれかによることを求めた。基本方針を遵守しない会員に対しては、遵守の勧告等を行い、なお改善が認められない場合には、指定支援法人の支援対象からの除外、JFマリンバンク会員からの除外などの措置を講じるとした(拓水555号)。
2005(平成17)年8月、JFマリンバンク兵庫信漁連が臨時総会を開催し、同年12月にJF坊勢とJF福良の信用事業を譲り受けることを決議した。これにより、1県1信用事業統合体完成の最終事務手続きに入った。「JFマリンバンク基本方針」では、同年12月を期限に「1県1信用事業責任体制」の構築を求めており、期限内の体制構築が整った(拓水587号)。
JF兵庫信漁連は、2005(平成17)年12月、JF坊勢とJF福良の信用事業を譲り受け、本店1・支店11・営業店18・取次店15からなる、1県1信用事業統合体が完成した。1997(平成9)年10月の明石浦支店の統合から、8年の歳月をかけてようやく完成の運びとなった(拓水590号)。
2007(平成19)年5月発行の拓水607号でJF兵庫信漁連は、マリンバンクが郵便局・セブン銀行との入金提携を行い、マリンバンクの口座にATMから入金できるようになった、と紹介した。マリンバンクではこれまで、JA・信金・信組・郵便局・セブン銀行等のATMで、引き出しや残高照会に対応してきたが、今回の提携で一層便利になる、とした。
2016(平成28)年4月、JF兵庫信漁連とJF和歌山信漁連が大阪市内で、合併に向けた仮契約調印式を行った。合併後の名称は、両信漁連の職員から提案された「なぎさ」を採用し、「なぎさ信漁連」となる予定であることが発表された(拓水714号)。
JF兵庫信漁連とJF和歌山信漁連は、全国段階で研究・協議されている「広域信漁連構想」に先駆け、2013(平成25)年12月から本格的な合併協議を開始し、「統合基本計画書」を取りまとめた。双方の理事会で同計画書が承認されたことから、2016(平成28)年6月の通常総会において最終の方向性を決定するが、同年4月に、前述のとおり合併に向けた合併仮契約調印式を開催した。合併予定日は、2017(平成29)年4月1日とした(拓水715号)。
関連ページ
- 1989年7月、県信漁連が貯金業務を全国漁協オンラインシステムに移行
- 全国漁協オンラインシステムが稼働しても今後5年先の加入漁協は約半数
- 1995年11月、県信漁連にATM設置、香住町漁協・坊勢漁協に続いて県内3台目
- 1997年1月の年頭挨拶で信連会長が「漁協信用部と信漁連の統合ー1県1信」を構想
- 1997年6月の総会で1県1信参加の3モデル組合と「覚書」締結を発表
- 1997年10月、1県1信用事業統合体のモデル1号店として明石浦支店がオープン
- 1997年11月信用事業譲渡、同年10月の明石浦支店に続いて、津居山・香住加工が支店に
- 1998年4月信用事業譲渡、柴山港・香住・浜坂町支店がオープン
- 1998年4月、信漁連が淡路島に直轄の支店をオープン、活動拠点とする
- 1998年6月、淡路地区で次々と営業店がオープン、播磨地区でも同年10月に営業店が
- 2002年7月、JFマリンバンクがインターネットバンキングの取扱いを開始
- 2003年1月、改正再編整備法が施行され「1県1信用事業責任体制」の構築が求められる
- 2005年8月のJF兵庫信漁連の臨時総会で、同年12月1日の1県1信完了を決定
- 2005年12月1日、JF兵庫信漁連は本店1・支店11・営業店18・取次店15の1県1信用事業体完成
- JFマリンバンクが郵便局・セブン銀行との入金提携を実施、それぞれのATMで入金が可能に
- 2016年4月、JF兵庫信漁連とJF和歌山信漁連が合併仮契約調印、県域越えの合併は全国初
- JFマリンバンクなぎさは2017年4月の誕生を目指す