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(37)沿岸域計画営漁推進事業

1985(昭和60)年度から、沿岸域計画営漁推進事業が開始された。200海里体制の定着に伴い、日本の周辺水域の漁場における高度利用の重要性が高まる中で、沿岸漁業を主体とする地域漁業の環境は、漁獲と資源のアンバランス等、多くの課題を抱えていた。このため、本事業は漁業者による資源・漁場の自主管理を基本に、適正操業を実現し、就業機会を拡大させるとともに、生活環境の改善を図り、「活力ある漁村の形成」をめざすことを目的とした。具体的には、地域の漁業者集団が地域の実情に合った営漁計画をつくり、この計画に沿って営漁を推進するための経費を助成したのである(拓水350号)。

1986(昭和61)年1月発行の拓水352号には、県水産課普及係による「営漁と資源管理⑴-計画営漁実践事業がスタート-」が掲載された。200海里の定着、魚価の低迷、燃油価格の高騰が漁業の三重苦といわれたが、沿岸漁業ではさらに過当競争、すなわち過剰操業・過剰投資が加わった。このような現状を踏まえると、今後は資源の培養とそれに見合った適正な操業の実践を図る必要があった。このために、漁業者間の話し合いによる計画的な営漁が必要とされた。この事業の実施主体は漁協であるが、複数の漁協が共同で実施することも可能であった。計画づくりの期間は一般地区が1年、濃密地区が2年であった。兵庫県では全体で20地区が予定されており、初年度(1985年)はすでに濃密地区1漁協、一般地区5漁協が指定され、作業に入っていた。営漁計画には定める項目が決められており、5年後を目標に、項目ごとに現実的な実践内容を策定する必要があった。策定された計画は、県に提出して知事の承認を受けなければならなかった。県水産課普及係の担当者は最後に、営漁計画を作るメリットは、地域の漁業の現状を見直して、今後のあり方を考える絶好の機会になる、と述べている。

1986(昭和61)年2月発行の拓水353号には、県水産課普及係による「営漁と資源管理⑵-地域営漁計画書のつくり方-」が掲載された。それによると、地域営漁計画書の構成は、本文と付属資料に大別される。さらに本文は、①地域の現況、②地域営漁計画の基本構想、③地域営漁計画、の内容からなる。付属資料は、本文を補足説明するための諸表で、内容は、①地域営漁計画策定の経緯、②地域営漁計画に関する意向調査の結果の概要、③人口、世帯、産業就業人口の動向、④所得規模及び目標漁業所得、⑤漁獲量、生産額、生産所得の見込み、⑥目標所得と所得見込みの対比、⑦格差是正のための個別事業計画、であった。県水産課普及係の担当者は、この計画を作るには、関係漁業者の意向調査や、協議会等による話し合いに基づく合意形成が必要で、計画の内容は実施可能な実態のあるものでなければならない、と述べている。

1986(昭和61)年3月発行の拓水354号には、県水産課普及係による「営漁と資源管理⑶-資源管理型漁業時代を迎えて・高砂市地区の先例をみる-」が掲載された。それによると、資源管理型漁業とは「漁業資源の増大を図りつつ、そこから多くの経済的利益をあげる漁業」と定義づけられ、21世紀に向けた漁業のあり方を示す言葉ともいえる、とある。日本の漁業は高度経済成長に伴う魚価の上昇や装備の近代化に支えられ生産を伸ばしたが、昭和50年代を迎えると情勢は一変した。魚価の低迷、生産コストの上昇、漁獲の減少による漁業経営の悪化が年々明らかとなり、全国的に資源管理型漁業への模索と移行が始まった。高砂市には4漁協があり(1986年当時)、主幹漁業である小型底曳網漁業(約100隻)が、1978(昭和53)年から一斉に、操業時間制限、稚魚の漁獲制限などによる資源管理を実行し成果をあげた。この事例は、全国発表大会や、NHKが制作した番組「操業協定」の放映によって、資源管理の好事例として全国的に注目された。拓水354号には、高砂市4漁協の具体的な制限の詳細が紹介された。

1986(昭和61)年6月発行の拓水357号には、県姫路農林水産課による「営漁と資源管理⑷-坂越地区における営漁計画-」が掲載された。1985(昭和60)年度から始まった計画営漁推進事業に基づいて、兵庫県では初年度に一般地区4地区、濃密地区1地区が指定され、計画書づくりが行われた。このうち一般地区では1986年3月末に計画が完成したので、順次「拓水」で紹介する予定であり、まず坂越漁協の営漁計画の概要が紹介された。

1986(昭和61)年7月発行の拓水358号には、県洲本農林水産課による「営漁と資源管理⑸-仮屋地区における営漁計画-」、1986(昭和61)年8月発行の拓水359号には、県但馬普及班による「営漁と資源管理⑹-竹野町地区における営漁計画-」、1986(昭和61)年9月発行の拓水360号には、県洲本農林水産課による「営漁と資源管理⑺-佐野地区における営漁計画-」が順次掲載された。

1987(昭和62)年2月発行の拓水365号には、県洲本農林水産課により、濃密地区に指定された北淡町地区の初年度にあたる1986(昭和61)年度の取組が紹介された。これまで兵庫県で指定された地区は、上述のとおり単一漁協のみであったが、北淡町は4漁協合同での取組で、開始早々は協議が難航したという。まず地域の漁業者の思いを確認するために、全戸アンケートを実施、ノリ養殖については別途、漁場に関するアンケートも行った。県洲本農林水産課の担当者は、アンケート結果の検証はこれからだが、これらをもとに漁業者が自分たちの手で地域の漁業を良くしていくことを願う、と述べた。

1988(昭和63)年6月、北淡町町民センターと同保健センターにおいて、北淡町四ヶ浦漁業会(旧北淡町内4JFで構成)主催による漁業者検診が行われ、392名が受診した。この検診は1986(昭和61)年度から2ヵ年かけて取り組んだ濃密地区計画営漁実践事業の一環として実施したものであった。計画策定時に設けた婦人部会のアンケートに、「検診を受けたいが受けられない」、その理由として、「定休日と検診日が一致しない」「施設が遠い」との意見があったため、営漁計画に盛り込んだうえで、今回の取組となったのである。北淡町では、今後は毎年6月を「北淡町漁業者健康月間」と定め、各漁協と協議の上、漁業者検診を実施することとした(拓水382号)。

漁業者検診:北淡町
▲漁業者検診:北淡町

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