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(42)日韓漁業協定

1998(平成10)年9月、香住町漁協大会議室において兵庫県漁連、鳥取県漁連、但馬地区漁協協議会の3団体主催による「日韓漁業協定締結に係る緊急漁民集会」が開催された。1996(平成8)年2月に東京で開催された6,000人規模の「200海里確立全国漁民代表者緊急集会」で200海里早期確立を政府・国会、国民に強く訴え、その後2年間にわたる粘り強い運動によって、1998(平成10)年初頭の日韓漁業協定終了通告が実現した。そして、新協定締結に際しては、山陰沖日本海において竹島を含む排他的経済水域が設定され、長年にわたる韓国漁船の無秩序な操業から解放されることを期待した。ところが、政府間で進められた交渉内容は、漁業者の期待を裏切るものであった。緊急集会で満場一致で採択された決議は次の5項目、すなわち、①新協定締結交渉においては安易に妥協することなく、資源の保護・管理を大前提として取り組むこと、②我が国排他的水域における外国船への漁獲割り当てについては、科学的根拠に基づいた資源状況が把握されるまで行わないこと、③我が国排他的経済水域においては外国船の底刺網、バイ籠の操業を認めないこと、④暫定水域を設定する場合には、領有権問題で調整が必要な竹島周辺海域に限定して設定すること、⑤暫定水域の資源管理については、日韓両国の共同管理とすること、の実現を求めるものであった。決議に基づく要請書をもって、兵庫県漁連会長ら代表者が外務省・農林水産省などの関係省庁へ陳情した。さらに全漁連・200海里全面適用推進本部・大日本水産会が、都内で「国連海洋法に則った日韓漁業協定の実現を求める緊急集会」を開催、漁業代表者ら300名が参加し決議文を採択した。閉会後、代表者が外務省・農林水産省などへ要請活動を実施した。

緊急漁民集会:JF香住町(現JF但馬)
▲緊急漁民集会:JF香住町(現JF但馬)

その後、日韓漁業協定交渉の実務者協議が行われ、調整が難航したが、最後は首相の決断で基本合意に達した。即日、全漁連200海里全面適用推進本部は、「日韓漁業協定の基本合意に関する声明」を発表し「基本合意に絶対反対」を表明した。さらに、同推進本部が緊急全体会議を開催し、暫定水域の設定に絶対反対とする「日韓新漁業協定の基本合意に関する特別決議」を採択、ただちに首相・農水相などへの要請活動を行った。自民党水産部会でも、日韓新漁業協定の基本合意に関して、「総理決断として漁民無視、水産部会軽視で承服できない」など、不満と非難の意見が相次いだ(拓水505号)。

1999(平成11)年1月、日韓新漁業協定(※1)が発効した。具体的な操業条件等については、同年2月に水産庁長官と韓国海洋水産省次官補の協議により合意に至った。その内容は、但馬地区漁業者の積年の願いであった、日本海における韓国漁船の底刺網漁業を全面禁止とすることと、かご漁業については、一部条件付きで韓国側に認めるものとなった。韓国漁船は以後2年間、日本海EEZ(排他的経済水域)内でのズワイガニを中型機船底びき網漁業(かけ回し)で漁獲することになった。また、ベニズワイガニの漁獲は認めないことになった(拓水509号)。

1999(平成11)年1月、長年の悲願であった日韓新漁業協定の発効を機に、但馬の漁業は新しい出発の時を迎えた。旧漁業協定下では、両国とも領海12海里を除くすべての海域を公海と位置づけ、双方の漁業規則を尊重することを前提に、両国漁船は日本近海で入り乱れて操業を行ってきた。過去には日本漁船が韓国近海に出漁した歴史もあるが、韓国の経済成長とともに、韓国漁船が日本近海で日本漁船を苦しめる存在になった。韓国漁船の日本近海への進出には、日本の商社も関係していた。商社は韓国漁船が知り得ない魚礁や好漁場のデータを韓国側に提供して、日本近海への出漁を容易にし、韓国漁船が漁獲した水産物を買い上げて日本に輸入した。韓国漁船は日本漁船の10倍の漁獲効率があるといわれる底刺網漁法でズワイガニを漁獲し、資源管理など無視した操業を続けてきたのである。

日韓新漁業協定は、竹島領有の問題を棚上げしたうえで、日韓両国が同等の権利を有する暫定水域を広範囲に設定した。しかし、この暫定水域には韓国側の幅2㎞、長さ40㎞にわたる底刺網が張り巡らされ、ズワイガニの好漁場はすべて占領されていた。新協定発足当初は、暫定水域内における操業ルールを確立するための政府間交渉が行われたが、竹島問題や、日本による韓国併合という歴史的問題等によって、交渉はまとまらなかった。そこで、2000(平成12)年3月から、交渉は日韓両国の民間漁業者間協議に委ねられることになった。同年7月には地元選出の衆議院議員が農林水産大臣に就任したことから、同年10月、兵庫県漁連主催による「農林水産大臣と漁業者との懇談会」を開催し、兵庫・鳥取両県の漁業者約300名が参加して、難航する日韓民間漁業者間協議の打開を要請した。同年11月には農林水産大臣が訪韓し、事態打開に向け強く働きかけたが、その後の民間協議は平行線をたどるばかりであった。ズワイガニの解禁を間近に控え、但馬地区の5漁協の組合長を中心に訪韓団を組織し、正式協議とは一線を画した草の根交渉の準備を進めたところ、韓国政府から兵庫の訪韓団を正式民間協議に格上げして協議を再開するとの申し出があった。ところが、交渉は日本の提案に対して韓国側が否定するだけで、韓国側からの提案・譲歩はなく、物別れに終わった。訪韓団帰国後の報告会で、農林水産大臣は、「国際間の交渉は粘り強く行うことが肝要で、今後も政府として引き続き努力する」と述べた(拓水530号)

日韓漁業問題懇談会
▲日韓漁業問題懇談会

2001(平成13)年9月、「兵庫・鳥取・島根3県日韓暫定水域対策協議会」主催による「山陰漁業対策等自民党国会議員連盟・日韓漁業問題懇談会」が東京都内で開催された。3県の知事、3県選出の自民党国会議員、JF全漁連、3県漁連関係者、水産庁長官、海上保安庁長官、外務省アジア大洋州局参事官などが参加した。日韓暫定水域の操業ルールの確立については、新協定締結時に政府間協議が難航し民間協議に委ねられたものの、韓国側の不誠実な対応で進展がなかった。暫定水域には韓国漁船の底刺網、かにかご等の漁具が周年敷設され、日本の漁船が操業出来ない状況が続いていた。また、2000(平成12)年12月には、兵庫・鳥取の底曳船が韓国船との漁具トラブルに巻き込まれ、船長が韓国監視船に一時拘束される事件が発生した。このため、兵庫・鳥取・島根3県の行政・県漁連は、2001(平成13)年1月に3県による暫定水域対策協議会を設立し、国会・政府・JF全漁連に対し、事態の打開を求めた。しかし、現状の水産庁主体の取組では不十分との認識のもと、3県知事を先頭に政府への強い働きかけが必要との判断から、今回の懇談会開催となった。懇談会では、各知事・業界代表者らが現状を報告し、国会議員からの活発な質問・意見交換が行われた。その結果、民間協議には限界があることから、政府間協議に移行すべきとの結論に達した。懇談会終了後には、各県代表者らが農林水産大臣・外務大臣・国土交通大臣及び関係部署に対し要請活動を行った(拓水540号)。

2001(平成13)年10月、韓国ソウル市において第10回日韓民間漁業者団体協議会が開催された。この協議会で、ズワイガニ漁業の日韓暫定水域内における一部特定水域設定と、特定水域における日韓漁期分割操業等で、一部民間合意が成立した。これまでの民間協議では、韓国側の不誠実な態度によって交渉は難航し、民間協議には限界があるため政府間交渉への移行を求めてきた。この間水産庁は、政府間交渉への移行を視野に入れながらも、民間協議再開を韓国側に促してきた。韓国側の変化の理由は不明であったが、関係者は一つの出発点である、との感想を述べた(拓水541号)。

2002(平成14)年6月、自民党本部会議室において、2回目となる「山陰漁業対策自民党国会議員連盟・日韓漁業問題懇談会」が開催された。暫定水域内は韓国漁船に占拠され、日本の漁船が操業できる状況にはなく、さらに暫定水域の資源の枯渇から、日本のEEZ内で韓国漁船の不法操業が増加しているため、3県日韓暫定水域対策協議会から、①暫定水域内の操業秩序を政府の責任で早急に確立し、日本のEEZ内での無許可操業の取締体制を強化すること、②韓国ベニズワイガニ漁の休漁の完全実施を監視すること、③日韓・日中新漁業協定対策漁業振興財団事業による漁業経営安定対策を強化すること、などの要望を行った(拓水549号)。

2003(平成15))年12月、兵庫・鳥取・島根3県の知事が、農林水産大臣、外務大臣等に対し、暫定水域に係る諸課題の解決に取り組むよう要望した(拓水567号)。

2010(平成22)年3月、日韓暫定水域が設定されてから10年以上が経過したが、暫定水域はいまだに韓国側の漁具で占拠され、日本漁船は操業ができない状況が続いていた。さらに、韓国漁船による日本のEEZ内への漁場侵害も頻発していた。そこで、同年3月、全国底曳網漁業連合会の会長らが民主党幹事長室に同党副幹事長を訪ね、政府に対して、①日本のEEZ内での韓国漁船の違法操業の取締強化、②暫定水域の資源管理体制を確立、③我が国沖合底曳網漁船の暫定水域内での操業の確保、④投棄漁具の清掃に対する支援の拡充、などを要望した(拓水642号)。

2012(平成24)年1月、自民党本部で兵庫・鳥取・島根3県日韓暫定水域対策協議会が「日韓漁業問題に関する意見交換会」を開催した。自民党側からは山陰漁業対策自民党国会議員連盟所属の国会議員が参加した。漁業者側から、1999(平成11)年に日韓新漁業協定が発効して13年になるが、韓国船による違法操業、無謀操業が横行し、状況が根本的に改善する見通しが立たない、との意見が示され、重点的な支援対策を強く求めた。また、韓国船によって不法投棄された漁具の回収等の経費負担が、国の基金から単年度予算に変更されたことに対して、問題解決までは基金対応を求めることを要望した。さらに、日本は韓国EEZ内での操業許可を返上したのであるから、韓国漁船の日本のEEZ内での操業を禁止すべきであるとする要望も示された(拓水664号)。

2012(平成24)年7月発行の拓水669号に、同年5月末で終漁した但馬地区の沖合底曳網漁業・ズワイガニかご漁業(自主休漁)の漁業者が、この時期、韓国漁船によって不法投棄された漁具を回収する状況が紹介され、回収した漁具が、各漁港に積み上げられた写真が掲載された。漁具の回収・廃棄に関する経費に対して、国は特別基金を設立して負担してきたが、2010(平成22)年度からは、単年度予算に変更された。日韓漁業問題の解決には、本来は両国政府間の交渉によるべきであるが、現実は日韓民間漁業者団体間協議に委ねられ、解決の糸口が見えない状況が続いた。

2013(平成25)年2月、自民党本部で山陰漁業対策自民党国会議員連盟と兵庫・鳥取・島根3県日韓暫定水域対策協議会による「日韓漁業問題等懇談会」が開催された。漁業者の意見として、暫定水域・竹島問題などに加え燃油高騰問題で、極めて厳しい状況であることが示された。さらに、日韓暫定水域で被害を受けている3県漁業者に対する、継続した支援のための基金の再設置と、燃油高騰対策が強く求められた(拓水677号)。

一方、1984(昭和59)年12月発行の拓水339号には、日朝漁業協定について、以下のような記事が掲載されている。

日朝漁業協定(※2)は、1982(昭和57)年6月末日をもって失効したことで、北朝鮮水域での操業ができなくなった。1984(昭和59)年10月、協定復活に向け、日朝友好促進議員連盟が訪朝、同月15日に日朝漁業協定が締結調印された。この協定の復活更新によって、兵庫県のイカ釣り漁船27隻が出漁許可申請を行い、同年11月9日に北朝鮮水域に向け出漁した。北朝鮮側の配慮によって、許可証が3週間で届けられ、低迷が続いていたイカ釣り業界にとって朗報となった(拓水339号)。

 

(※1)1999(平成11)年1月に発効した日韓漁業協定の2023(令和5)年5月末時点の状況は、暫定水域内の漁場交替利用や海底清掃について、民間協議での問題解決が困難であることから、政府間交渉に委ねられたが、韓国側の主張が公平利用の原則から大きくかけ離れていること等によって、進展は見られていない。

(※2)1984(昭和59)年10月に復活した日朝漁業協定は、1987(昭和62)年に再締結(更新)された。1989(平成1)年頃までは、兵庫県からも北朝鮮水域内への入漁手続きが行われていたが、実際の出漁状況は不明である。2023(令和5)年5月末現在では日朝漁業協定は存在しない。

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